自社の経営課題 整理法

1-2-4 損益計算書分析で収益性の問題点をつかむ

5  変動費の推移から、売上高とのバランスをみる

変動費は売上に比例して増減しますが、材料費や燃料など外的要因で価格が高騰し、売上と関係なく増加するものもあります。

調達先を吟味し、条件のよい先への切替えなどを検討しなければなりません。

また、社内でも不良在庫の一掃、歩留まりの向上などマイナス要因を除去する取り組みを怠ると、変動費は自然と増加します。

小売業や卸売業の仕入については、販売計画との連動を考慮しないと仕入は膨らむ一方です。

仕入担当者は販売計画との整合性や在庫管理責任者、営業責任者と密に連携を取り適正化を進めます。

仕入先や外注先との長い取引きの中で仕入代や外注費の削減は、慣れあいの関係なため、言い出しにくいことは非常に多くあります。

しかし、変動費の削減は非常に重要です。

発想を変えて、明日から今と同じビジネスを始めるとしたら、どこから仕入れるか、どこに外注を頼むかなど、当然、安くて質のいい会社を探します。

その発想で再度、仕入先・外注先を再検討してみる必要があります。

 

6  固定費の推移から増減の妥当性を検証する

固定費は増加した科目を精査し、増加の要因に妥当性があるか検討しなければなりません。

固定費はすべて圧縮すべきものではないからです。

人件費は、適正な労働分配率の範囲内にあるかを見ます。

また、政策的に人材を採用した場合は生産性が向上したかを確認します。

研究開発費など将来の利益確保に向けて、かけるべき費用(利益貢献経費)についても妥当性を吟味します。

唯一圧縮して良い固定費は節減可能費としてとらえ、可能な限り圧縮させることです。

「コストカッター」の異名をとる、日産のカルロス・ゴーンは仕入コストを1割削減しましたが、方法は実に合理的でした。

部品、ユニットのサプライヤーの数を約1,400社から約800社に減らしました。

全世界を対象にし、仕様を見直し、過去のしがらみを除いて、純粋に日産にとって最も有利なサプライヤーを選択したのです。

また、人員削減も23,000人の解雇を行うと同時に、研究開発を中心として優秀な人材を一方では9,000人採用しています。

売上を増やす為の準備を怠らなかったことが窺えます。「販売費は削減しない」という考え方もあります。

売上高が下がっているときに販売費を削減するとますます売上が下がります。

当たり前の事なのですが、不況になると広告宣伝費削減、営業マンのコスト削減といった話がすぐ出てきます。

同じく未来開発費の削減も然りです。研究開発費や教育訓練費といった投資費用も不況時のコストダウン項目に上がりがちです。

しかし企業は、投資を行って果実を得るという流れになっています。

意味のない投資はもちろん止めるべきですが、投資を止めると企業の成長はなくなることを注意しなければなりません。

基本的に企業活動は、投資を行う(固定費増加)→付加価値増加(変動費率低下)という関係になっています。

よって固定費を削減するリストラ政策で利益のバランスをとろうとし続けると、固定費削減→付加価値減少→固定費削減→付加価値減少となっていって企業はゼロになってしまいます。

不況下においても、経営とは常に何に投資すべきかを考えないといけないのです。

 

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