付加価値に占める割合で、最も大きい金額となるのは人件費です。
人件費に係る代表的な指標として、その適正度合いを分析するのが労働分配率です。
労働分配率は、人件費を付加価値で割って計算されます。
これが大きくなると人件費負担が大きくなることを意味しています。
日本の企業の労働分配率は、全業種平均で50%強となっています。製造業平均では60%弱です。
この比率は高ければ高いほど「ヒト」による仕事が多いことを示します。
これだけ情報技術や生産技術が進んでいる今日、「ヒト」の力で仕事をする部分が他社に比べて大きい場合、たいていは生産性があまりよくないという評価をすることになります。
しかし、サービス業など労働集約性の高い業界などでは、労働分配率は必然的に高くなりますし、高度に自動化された資本集約性の高い製造業などは低くなります。
したがって、労働分配率は同じ業界の中で他社と比較して高いか低いかが問題となってくるわけです。
この式の意味は、売上高に占める人件費の割合を減らすか、売上高に占める付加価値の割合を増やせば、労働分配率が小さくなることを表しています。
人件費/従業員数は「1人当たりの人件費」で給与水準を表します。一方、付加価値/従業員数は「労働生産性」です。
会社としては給与水準をおさえて、なおかつ労働生産性を上げれば、労働分配率が下がり、会社の生産性が向上することがわかります。
この式より、平均賃金を下げるか、従業員を減らすことにより労働分配率が小さくなることがわかります。
平均賃金を下げる手段としては、正規社員のパート化などが考えられます。
また、従業員数を減らす手段としては、能力開発により従業員の生産性を向上させたり、資本集約性を向上させることが考えられます。
【卸売業A社の事例】
● 生産性・成長性分析
※標準値はTKC BAST ジュエリー製品卸売業の黒字企業平均値
【生産性分析から抽出した問題点】
1. 限界利益率が低い ・・・仕入の見直しが必要
2. 一人当たり売上高が少ない
3. 一人当たり限界利益が少ない
4. 労働分配率が高い
上記2~4について、下記に補足します。
● 一人当たり人件費は高くないため、従業員数が多いと判断できる
● 一人当たり限界利益の増加